このたび、Offensive Security社が提供する認定資格 OSCP+(Offensive Security Certified Professional Plus) に合格しました。せっかくなので、これから受験を考えている方の参考になればと思い、学習の進め方や試験当日の流れ、率直な感想をまとめます。
OSCP+ とは
OSCP(Offensive Security Certified Professional)は、Offensive Security社が認定するペネトレーションテストの資格です。
一般的な資格試験と違い、コース(PEN-200)と実技試験がセットになっているのが特徴です。
コースやLabで学んだ内容を、最終的に実技試験で確認する、という位置づけになっています。合格ラインは70点です。
試験は以下の2部構成です。
- 前半(23時間45分):複数のマシンを実際に攻略する実技試験
- 後半(24時間):試験内容をまとめたレポート作成
OSCP+ 学習前の状況
2021年からWebアプリケーションの脆弱性診断業務に携わっていますが、正直なところ、それ以外の分野に強いわけではありませんでした。
新しい攻撃手法を知るのは好きでしたが、脆弱性診断だけを続けていると、
- 技術的な理解に限界を感じる
- お客様への説明が表面的になりがち
と感じる場面が増えてきました。
「攻撃側の視点をきちんと理解したうえで、それを実務に還元したい」
そんな思いから、今回OSCP+のコースを受講することにしました。
学習の進め方とスケジュール
かなり偏った進め方をしているので、あくまで一例として見てもらえると助かります。
普段の業務で使っているツール関連の教材はスキップしていたこともありますが、試験直前で、コースは50%弱程度しか触っていませんでした。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2024年12月 | PEN-200 Learn One 購入 |
| 1月〜10月中旬 | ほぼ触らず |
| 10月下旬 | Active Directory 学習 |
| 11月上旬 | Windows / Linux マシン学習 |
| 11月中旬 | 高難易度 Labs に挑戦 パスポート申請 |
| 11月下旬 | 必要そうな Labs を重点的に消化 |
| 12月上旬 | レポート練習+Labs パスポート取得 |
| 12月12日 | 有給を取って試験 |
| 12月14日 | 合格通知 |
パスポートは発行までに思っているより長い期間かかるので、余裕を持って発行しておいたほうがいいなと思いました。
学習時に意識していたこと
Discord は積極的に使う
Offensive Security公式のDiscordでは、質問するとメンターからヒントや攻略の糸口をもらうことができます。
英語は得意ではありませんが、DeepLやChatGPTに翻訳してもらいながら質問することで、理解が一気に進みました。
Exam Guide はしっかり読む
ルールのある環境で動くのがあまり得意ではないため、
公式の OSCP+ Exam Guide と関連ドキュメントは、試験直前まで何度も読み返していました。
特に、Metasploitの扱いなど「やっていいこと・ダメなこと」が明確に書かれているので、ここは必ず確認しておくのがおすすめです。
試験当日の進行とペース配分
個人的に一番きつかったのは、マシンBのProof.txtを取るまでの時間でした。
事前に 「AD環境をすべて攻略してから、スタンドアロンマシンに取り組む」 という自分ルールを決めて試験に望みました。
この方針を最後まで崩さなかったことで、気持ちを切らさずに進めたと思います。
| 時刻(JST) | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| 13:00 | 昼食後、試験開始 | 0 |
| 13:00–14:00 | スキャン | 0 |
| 14:10 | ADマシン1台目の特権昇格が完了 | 10 |
| 16:20 | ADマシン2台目の特権昇格が完了 | 20 |
| 18:20 | ADマシン3台目の特権昇格が完了 | 40 |
| 18:30–20:00 | 休憩 | 40 |
| 21:30 | マシンA Local.txt取得 | 50 |
| 23:10 | マシンB Local.txt取得 | 60 |
| 翌4:30 – 翌8:00 | 睡眠 | 60 |
| 翌11:40 | マシンB Proof.txt取得 | 70 |
| 翌12:45 | 試験終了 | 70 |
レポートは18時頃には書き終えていましたが、普段の脆弱性診断から記載ミスをしやすい自覚があったため、時間を空けて何度も見直しました。
実際、見直すたびに修正点が見つかったため、提出直前はかなり緊張していました。
試験時に意識したこと
AIツールは事前に削除する
OSCP+では対話型AIの使用が禁止されています。
誤って使ってしまうリスクを避けるため、試験前に拡張機能を含めてすべてアンインストールしました。
役立ったツール
- BloodHound
AD環境を視覚的に把握でき、権限関係の理解がかなり楽になります。 - ligolo-ng
内部ネットワークに入る際に重宝しました。 - Obsidian
Markdown+画像対応で、ローカル管理できる点が便利です。 - tmux
画面を分割して情報を集約できるので、試験中の視認性が向上します。
まとめ
もう少し余裕を持って勉強したほうがよかった、というのが正直な感想です。
一方で、OSCP+を通して「攻撃者視点でシステムを見る」経験ができたのは大きな収穫でした。
そのまま実務に使える場面は多くありませんが、診断時の考え方や説明の引き出しは確実に増えたと感じています。
教材も丁寧に作られているので、新しい技術を学ぶのが好きな方には向いている資格だと思います。

株式会社神戸デジタル・ラボ
デジタルビジネス本部 Securityチーム
奈良高専情報工学科卒。2021年にKDLに入社。SecurityチームでWebアプリの脆弱性診断に従事。
日々のセキュリティニュースを追いかけながら、社内に展開。
列挙されているものを読んで作業するのが苦手なので、業務の自動化に勤しんでいる。Burp Suiteの拡張機能を自作するための記事などを投稿。



